Q. まずは普段のお仕事について教えてください
有限会社ケア・プランニングという会社を経営しています。所謂「福祉」と呼ばれる分野が主な事業領域で、「デイサービスほっと」や訪問看護の「訪問看護ステーションSUN」、訪問介護サービスや福祉用具のレンタルを行う「ホットステーションSUN」、小規模多機能型居宅介護の「燦々ほーむあらかわ」など、主に荒川区で様々なサービス、施設を展開しています。
Q. 一言で福祉と云っても様々ですね。musubiプロジェクトにはその数あるサービスの中の「NPO法人HOPE」でご協力をいただいていますが、こちらはどういったサービスになるのでしょうか?
就労支援ですね。障がいをお持ちの方だったり、ご自身で面接を受けて入社してという形では普通に働くのが困難な方に対して、就労支援を通して社会復帰を目指して後押しするNPO法人と言えば良いでしょうか。
就労支援にも様々な形がありますが、HOPEでは精神疾患や知的障害をお持ちの方、特にうつ病で苦しんでいる方など元々は健常者だけれど、ちょっと働くのが辛くなってしまったという方の支援に力を入れています。
Q. 私が不勉強なのかも知れませんが、介護などの一般的にイメージされる「福祉」とは少し違う印象ですね。どういった共通点があってこの事業を始められたのですか?
どうしても健常者の方は「障がい者」と言うと他人事といっては失礼ですが、自分に関係が無いことのように捉えてしまいがちです。しかし今はまだ若い私たちもいずれ確実に高齢者になるように、ストレスの多い現代社会では精神疾患は決して他人事ではありません。誰にでも障がいを抱える可能性はある、という意味では同じです。
あとは単純に、私たちの仕事では介護福祉士という資格を持っているスタッフが多いんですよ。私たちがお手伝いをさせていただく高齢者の方の中には要介護認定を受けた方が多くいらっしゃるので、障がいをお持ちの方という意味では「同じ資格」というと杓子定規ですが、同じ視点で、介護で培った経験が活かせる仕事だと思います。実際に高齢者の方に暖かく接することができるスタッフは、HOPEを利用される障がいをお持ちの方への接し方もフレンドリーで、信頼されているのを感じます。
HOPEはまだ弊社の事業としては歴史が浅いのですが、高齢者同様に仕事でストレスを抱える方もどんどん増える傾向にあると思うので、どちらもいま社会に必要とされている事業と感じています。共生型社会の実現に向けて、両輪で展開していきたい事業ですね。
Q. なるほど。そんなHOPEとmusubiプロジェクトとの関わりを教えてください。
関わりというか…当初は旧知の丸山さんが凄い勢いでいらっしゃって、「介護でおしぼり使うよね?」みたいな感じだったので(笑)まあ先輩だしお付き合いでケア・プランニングのおしぼりぐらい作るのは仕方ないかといった貰い事故のような感想でした。
ただ、話の中で「内職作業を出来る人を探している」というので、それならお役に立てるかも知れませんと。言ったのか言わされたのかは良くわかりませんが(笑)そこから関わりが生まれました。HOPEでは就労支援の一環として、元々アクセサリーの製造と販売を手がけていました。HOPEに通われている方の中には、人と接するのがどうしても苦手、というのが社会復帰の課題になっている方が多くいらっしゃいます。黙々と作業が出来るアクセサリー作りは、たまたま得意な方がいたというのもありますが、皆さん元々真面目な方が多いので比較的やりやすい作業になるんですね。アクセサリーを売って幾ら、というより、自分が作ったものが誰かに使って貰えることを想像したり、そんな繋がりを考えることが就労支援や社会復帰の一助になります。
だからmusubiはぴったりだと思いました。名前も「結び」で、人と人との繋がりを生むための商品だと聞いてますし、いわゆる「粗品」なので商品には必ず企業名などお客様の名前が入ってますよね。HOPEでは主におしぼりと、それを入れる袋や箱の提供を受けて、お客様の要望に応じておしぼりを必要な数だけ袋や箱に入れ、発送するまでを担当しています。この作業の中で「このmusubiを配る人」「musubiを受け取っておしぼりを使う人」など、様々な繋がりや人と人との結びつきを想像していただくことが、社会復帰に繋がるんじゃないかと思わされました。いや、思いました(笑)。
Q. 良いお話ですが横からの圧が強いですね…。HOPEに通う皆さんから何かmusubiに対する反応はありましたか?
丸山:
反応凄かったよ!!初めてHOPEさんを見学させて貰って、musubiの説明をした時なんてさ、例によって熱くmusubiについて語ったんだけど、失礼な話皆さん大人しく話は聞いてくれるけどあんまり理解されてないのかなって思いながら話してたんだよね。
でも僕の話が終わったら立ち上がって拍手してくれて、逆に企業の社長にお話するよりも、もっと純粋で素直に「これは人と人との繋がりを作る商品」ってことを理解してくれて、話し終わったらすぐに「こうやって詰めると、より綺麗に、より早く詰められるんじゃないか」という相談が始まったり。勝手に「障がいをお持ちの方だから、健常者が梱包発送するより遅いんじゃないか」といった先入観を持ってた自分を恥じたもの。HOPEさんは凄いよ!
Q. えっと、すみません。丸山さんには聞いていません(笑)
(笑)
まあ、でも丸山さんの言われる通りです。皆さん本当に真面目な人ばかりです。今はどこも人手不足なので、障がいを持った方でも比較的仕事を探すことは出来る状況にはなりつつあります。でも「この作業はちょっと難しい」という身体的な障がいによる線引が明確な方に比べると、どうしても知的障がいや精神障がいをお持ちの方の就労は遅れがちで、国からの補助も永遠に出るわけではありません。就労をきちんと支援して、社会に送り出すお手伝いをする必要があるんです。
自分は必要では無いのでは、と思い詰めたり、悩んでいる方に自信を付けていただいて、施設外就労や直接雇用に繋げていきたい。その過程で、自分のペースで粗品に入っている企業名でも、こんな仕事やこんな企業があるんだ、皆が自分たちが携わったmusubiを使ったり配ったりしているんだという視点を持つことは、必ずプラスになるとは思います。
Q. 私たちもmusubiを広めて、もっと就労支援、社会貢献に繋げていきたいですね。ありがとうございます。話は変わりますが、中原さんが昨年(2016年)に理事長を務められた東京青年会議所について教えてください。そもそもどのような組織なのでしょうか?
丸山:
凄いんだよ、中原くんは!!67年続く東京青年会議所の歴史の中で、初めて荒川区から理事長に選ばれたんだ。同じ荒川区の経営者として、この凄さを一言で説明すると…
Q. えっと、すみません。丸山さんには聞いていません(笑)今めちゃくちゃ中原さんのほうだけ見て質問しましたよね?
(笑)
丸山さんが言う通り、1949年設立で、私の代で67年の歴史があります。戦後の焼け野原の中で、20代の若者が祖国の復興に対する危機感から立ち上げた組織です。現在は大枠としてJCと呼ばれる日本青年会議所というものがあり、私はその東京支部というのか、東京青年会議所の理事長が昨年私だった、という形です。
経営者だったり、士業など個人事業主の方が多く所属されていると思うのですが、40歳で卒業というルールがあるので、若手企業人の自己成長の場として活用されているんじゃないでしょうか。リーダーシップを学ぶ(個人の修練)、社会貢献、世界との友情を育むという大きな三つの柱があって、たとえば「わんぱく相撲」ってあると思うんですが、あれは「子どもの遊び場がなくなってきた」というJCの問題意識が広がってここまで普及してきたものだと思います。所属メンバーが様々な委員会に分かれて、各自の問題意識について意見を交わして、何かを実行することで成果に繋げていく。ざっくり言うと、そんな組織です。
Q. 失礼な言い方かも知れませんが、小さい国みたいな感じですか?
うーん、国かどうかはわかりませんが、企業人同士が知り合って仕事に繋げようっていう経済団体や異業種交流会みたいなものとは少し違うかも知れませんね。
東京青年会議所は現在会員700人、年会費で考えると東京だけで年間2億円ぐらいの予算があります。
各委員会がさまざまな事業を実施して、お金を使うわけなので活動が終わったら当然報告がありますし、年に一度は全国の青年会議所メンバーが集まる全国大会があるんですが、この大会は全国から来る人達の宿泊など20億円の経済効果があると言われています。世界との友情を育むという目的もありますから、年に一度はアジア大会、さらに同じく年一度の世界大会もあります。昨年はカナダでした。
仕事に繋げよう、何かこの会で利益を得ようと思っていたら自腹でカナダには行かないですからね(笑)でもこの歳になると利害関係以外で友だちってなかなか出来ないもんですから、深い友だちが出来たというのもそうですし、人の使い方が身についたって言うんですかね。JCはそれなりに地位もお金もある方をお金無しに、というと語弊がありますが、情熱やビジョンで動かす組織なので。結果的に、経営者としての自分の成長を大きく後押ししてくれたのが青年会議所だと思います。
Q. なるほど、丸山さんがなぜ中原さんのような方をmusubiプロジェクトに巻き込めたのか、少しわかりました(笑)本日はありがとうございました!