musubi interview : 島 健

所属:株式会社ROOM810
役職:クリエイティブ・ディレクター
グラフィックデザインチーム 部長

好きな食べ物:わさび・とうがらし・こしょう
好きな立ち位置:右です。自分より右に人が立っていると不安になります。
好きな奇妙な冒険:ジョジョの奇妙な冒険
家族構成:
妻・息子0歳(超かわいい)

編集部より:
冷静なお調子者、残念な秀才タイプ。

真面目なことだけ話していれば割と手堅くまとめる力があるのに、ついつい人と違ったことをやりたい、面白いことしたいという欲求が抑えられない。
結果その余計なおまけの比重が大きくなってさほど面白いこともできず中途半端で残念な結果を招きがちな自称「減点法の男」がゼロから作り上げるプロジェクトに挑むミスマッチ感がmusubiプロジェクトの醍醐味のひとつです。

「粗品革命」「僕たちは雑巾の原料を贈り合っている」「おしぼりをウォーターサーバーのようにオフィスに常備しよう」「おしぼりを通じてコミュニケーションを再デザインする」と、それなりに役に立つコンセプトを打ち出す一方で、「時代劇で悪役の人が出してくる箱に似てるからこの商品の名前はmusubiワイロ」など、笑い上戸の人でも思わず真顔に戻る提案を真面目な顔でする「musubiプロジェクトのまとめ役」がmusubi projectを必ず何処かへ連れて行きます、何処かへ。ここではない何処かへ。

最近島が発案した主な「クリエイティブ」は「和さんは船越英一郎に似てるから、musubiをマツイ棒の代わりに売り出してSNSとかにジャンジャン載せて世界を獲る」というアイデアです。ノートに名前を書かれたり、深夜のYouTubeで名指しされたら良いのにと思いました。

Q. まずは普段のお仕事について教えてください

デザイン会社のクリエイティブ・ディレクターです。顧客となる企業の広告・販促などの戦略に沿って、それを実現するための印刷物やWEBや映像などを作る、或いは戦略自体を一緒に考える舵取り役のような仕事です。

と言うとカッコ良く聞こえますが、こう自分の仕事をドヤ顔で説明した後に尋ねられるのは大体「で、チラシは作れる?」「ホームページは?」「幾らで作れる?」といった質問なので、多分あんまり伝わってないんでしょうね。自分たちの業種内では通りが良いのでこの肩書を使いますが、自分で名刺に書いておいて鼻持ちならないなとは思っています(笑。

「デザイン」の語源は「計画を記号に表す」というラテン語らしいので、ざっくり言うと「あなたが自分では出来ないことを形にする整理屋さん」という感じです。
わあ、これはこれで自信満々で嫌な感じですね。

Q. そんな島さんがmusubiプロジェクトに関わることになったキッカケとは?

僕は今、元々友人だった男が社長を務める会社で働いています。彼の苗字は丸山と言って、株式会社三企の和さん(丸山社長)の弟にあたります。

なので和さんは最初「友だちのお兄ちゃん」、今は「社長のお兄さん」かな。
元々兄弟の縁で三企さんのユニフォームやロゴなどデザインお手伝いさせて貰って、親しい間柄でした。

手短に言うと、その親しいお兄さんがある日突然目の前に現れて、僕は和さんのことを設備会社の社長さんだと思っているわけですが、「俺はこれからおしぼりで世界を獲る」「世界を獲る方法はお前が考えろ」みたいなことを言い出して巻き込まれた状態ですね。

あんまり詳しくないですけど、応援して大金を注ぎ込んだアイドルが突然総選挙で結婚すると言い出したり、「俺野球選手になる」と言われた時のマイケル・ジョーダンのマネージャーなんかの心境に近い状態じゃないかと思います。「意味がわからない。が、やむなし」みたいな。

当時の和さんは「おしぼりのビジネスがしたい。でも所謂おしぼりのビジネス的なことはしたくない」という禅問答のような難題と「おしぼりは日本の伝統文化でおもてなし」という日焼けした滝川クリステル的な粗いコンセプトを抱えて興奮されている状態だったと思います。僕は先ほど申し上げた通り、ざっくり言うと整理屋ですので、なにはともあれ「これは片付け甲斐のある部屋だな」という形で関わりはじめました。

話を聞くうちに和さんが「粗品としてのおしぼり」に着目されていることがわかってきて、設備業という粗品を大量に贈るお仕事をされているからこそ出てきたアイデアなのだというコアな部分が理解できました。そこからは「タオルを粗品で贈るのはただの慣習で、もう形骸化している」「あれ大体全部雑巾になりますよね」「感謝もされない粗品を贈ることに意味はあるのか」「僕たちは雑巾の原料を贈りあっているんですよ」「やりましょうか、粗品革命」みたいな感じで、コンセプトは一気に固まりました。

今考えるとコンセプトというより、ただ悪口を言っているだけですね(笑。でも盛り上がったんですよね。これは面白くなる、いけるなと思いました。

Q. デザインやディレクションという観点から見て、musubiプロジェクトの面白さはどこにありますか?

自分で言うのもなんですが、多分僕、単純に丸山兄弟との相性が良いと思うんですね(笑。

二人とも恐らく「クリエイティブ・ディレクター」というのが本来どんな仕事なのかは全然興味が無いんじゃないかな。でも「それは確かに僕の仕事だな」と思う依頼や相談の仕方、プロジェクトにクリエイティブを活かすという方向に持っていくやり方は兄弟ともに非常に上手いですね。素直に尊敬しています。クリエイティブな人たちの上に立つべき資質を持っているというか。

結果的に、あの興奮気味におしぼりを握りしめて和さんが会社にいらっしゃった日から、わずか一年足らずで商標や意匠登録の出願をして従来にない不思議な商品を何種類もデザインしては生み出し、様々な企業の方に導入されるところまでたどり着くことが出来ました。musubiプロジェクトではコンセプトやコピーの考案といった「いかにもクリエイティブな人が好きそうな仕事」に限らず、かなり細かい部分まで管轄させて貰ってますが、「俺がコントロールしている」という満足感と自由さを僕に与えつつ仕事をまるっと放り投げてくるあの投げ方には天性の才能を感じます。

「お客さんが待ってるよ。早く売りたい。原価まだ?価格まだ?受注ツールまだ?パンフレットまだ?」みたいな。商品すら存在しないのにお客が待ってるってどういうこと?価格まで俺が決めて良いのか、原価まで俺が計算しないとダメなのかという新鮮な驚きがありました(笑。そして本当にお客さんは見たこともない我々の商品を待っていたという(笑。

クリエイティブの智慧を借りなければいけない場面で、下請け業者に接するように振る舞ってせっかくの果実を腐らせてしまう経営者は世の中にそれこそ粗品タオルの数ほどいますので、面白いプロジェクトだなと。ただ、日本中の社長が和さんのように振る舞いはじめたら、日本のデザイナーは全員過労死すると思います(笑。

Q. あ、そういう写真向けのわざとらしいジェスチャーは大丈夫です。島さんは普段どのようにmusubiを利用されていますか?

外出時、カバンに一本忍ばせてます。

顔がテカテカの奴にクリエイティブだディレクションだと言われても説得力が無いと思うので、以前は多分皆さんが「ギャッツビー」とか呼ばれてるような、汗拭きシート的なものをカバンに常備していました。でもあれ30枚入りとかじゃないですか。絶対今日の外出で使うのは1枚なのに、買ったら30枚持ち歩かなければならない、あの非効率がなんか嫌だなって。

musubiは一本だけ持ち歩けて場所取らないし、おしぼりが元々入ってた袋にしまっておけば分厚くて数時間は乾かないからプレゼン前に汗とか手とか拭いて、プレゼンでガチガチに詰められてまた顔がテカテカになっても帰りにもう一度拭ける。

一袋で二度美味しいですね。…良いキャッチコピーだなこれ(注:他社のです)。

Q. ありがとうございます。最後に他のmusubiプロジェクトメンバーの印象を教えて貰えますか(笑)

丸山さん(株式会社三企) >>
和さんのことはインタビューで散々話したからもう良いかな(笑。

多分リーダーって「俺は何もしてないんだけど周囲が支えてくれてるんですよ」という見せ方が上手くて、あと普通の人が三日で飽きる熱意を三年持ち続ける人のことだと思ってるので、生まれながらのリーダー的な人だなと思ってます。「僕はもうこれをおしぼりと呼びたくない」と言った二秒後の「で、このおしぼりなんですが」みたいな、あの感じは癖になりますね。musubiも癖になる商品に育てたいです。

三国志で云うと劉備玄徳。あ、やばい、これ以下全員三国志で例える流れだ…。

海東さん(株式会社オーシャンイースト) >>
ロケットのような推進力と暴走機関車のような破壊力を紙一重で兼ね備えた我らがリーダー、和さんを僕と一緒に止めてくれる心強い味方です。わりと平和な人生を生きてきたので、「味方」という言葉を久しぶりに使いました。別に敵は居ないんですけど(笑)

多分頭が良すぎる人って無意識に人に警戒される気の毒な役回りで、僕も他の形で出会っていたら海東さんのこと警戒したと思うんですが、一緒に和さんを止めて前に進んでくれるというだけで「良い人だ」「味方だ」という圧倒的な安心感があります。
野球でセットアッパーとかクローザーとかあるじゃないですか。チームが薄氷のリードで勝ってる時に七回を投げる人と八回を投げる人と、最後九回締める人。勝手にあの連帯感で海東さんのことを見ています。九回は和さんに譲る奥ゆかしさも兼ね備えていて素敵ですね。僕も奥ゆかしい人間なので。

三国志で云うともちろん諸葛亮。司馬懿じゃない。人が良さそうだもん。

伊藤さん(株式会社ROOM810) >>
なんですかこの同僚にコメントするっていう罰ゲーム(笑。今やmusubiは「三企さんから当社へのお仕事」という枠を超えてプロジェクトになりましたが、元々三企さんのデザインをうちの社内で担当して、ロゴやユニフォームを作ってくれたのが伊藤でした。

企業の経営者や会社を代表して参加される方が多く、ともすれば抽象的な話やアイデアの開示に終始しがちなプロジェクトの中で、ひとつひとつのお客様にしっかりとデザインとmusubiのコンセプトをお届けするという作業を愚直にしっかりと良く行ってくれていると思います。アイデアは良いものを持っているけど普段は自社から二人参加しているということで遠慮していると思うので、これからもっとmusubiを発展させていくために、彼の意見もどんどん取り入れていきたいですね。

真面目なこと言っちゃった。
企画や営業を担当している伊藤ですが、彼は攻めより守りに向いた人材だと思うので、営業マンとしては大成しないと思います(笑。

三国志で云うと楽綝ですね(三国志演義で出てくる超やられキャラ)。
冗談です、守りの達人、楽進です。マイナーか。張遼でも良いです。彼は強い人に付くタイプなんで、魏の武将が良いと思いました。

夏間さん(株式会社サンワ) >>
当初は和さんと僕とうちの伊藤が一緒に話し合って、たまにおしぼり業者さんである黒木さんに来ていただけるだけだったので、「musubiプロジェクト」という大げさな名前では無かったんですが、夏間さんが参加されてからは男性陣が皆カッコ付けはじめて、気づいたら「musubiプロジェクト」という名前に昇華されていました。

思いつきをプロジェクトにしたければ、チームに女性を入れろ。

という教訓を得ました(笑。

ただご本人は男性よりも男性的な突撃型の人材で、musubiがまだ商品自体存在していない時から、我々が思わず怯むような大企業の名前を出して「提案しましょう」「契約取りましょう」という感じだったので、和さんに加えてロケットが二つ付いたような状態で、結果プロジェクトが前にバンバン進むことになりました。

三国志で云うと張飛です。一万人の中に一人で突撃して生きて帰ってくる人だと思います。

黒木さん(日本ラインファースト株式会社) >>
musubiプロジェクトとか大げさに言ってますが、実際問題黒木さん一人いれば成立するんですよね(笑。
おしぼり屋さんですから。

基本的にmusubiプロジェクトというのは身も蓋もない言い方をすれば「本職のおしぼり屋さんを囲んで皆が好きなことを言う会」で、僕が黒木さんの立場ならキレて15分で帰る気がしないでも無いですが、そんな素振りを全く見せず笑顔で毎回「面白い試みです」「このプロジェクトは楽しい」と言って皆勤賞で来てくださる、太平洋のように心の広いオシャレな男、それが黒木さんです。

ただのアイデアだけの会、言いっぱなしのプロジェクトにならなかったのは、黒木さんがいつも笑顔で指針をくれたからだなと思います。上品で育ちが良さそうで温和で、勝手に黒木瞳の親戚だと信じることにしています。いや、そのほうがなんていうか、夢があるじゃないですか。

三国志で云うと魯粛。昔はすごい過激で悪い人だったのに今温和という。黒木さんみたいな人が昔すごい不良だったと思ったほうが、なんていうか、夢があるじゃないですか(以下略)。

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